(→前篇)
杉山明日香先生が産地で得た貴重なワイン情報を聞きながら、
ゆかりのワインを楽しむ、
1時間のささやかな集まり「サロン・ド・アスカ」。
今回はフランス・アルザス地方を取り上げています。
後篇は、より詳しいワインのお話しになりました。
なお、9、10、11月にも別の産地についてお話しする予定です。
ご興味を持たれた方は、ぜひご参加ください(第2回概要はこちら)。
アルザスワインの中心地「コルマール」
今回の視察は、まずはアルザス地方で一番大きな都市、
ストラスブールからスタートしましたが、
レンタカーを借りて、南のワイン産地「コルマール」へ。
アルザスのワイン生産の中心地です。
高速を使うと1時間、下道で1時間半ぐらい。
ストラスブールからコルマールへ、南へ向かうとき、
右手(西側)に山脈が見えてきます。
ヴォージュ山脈です。
この東側の斜面に沿ってブドウの畑が広がっているのですが、
この山脈が西から吹いてくる冷たい風を防いでくれるので、
緯度の割には温暖なんです。
そのおかげで良いブドウが育つと言われています。
コルマールはストラスブールにくらべ小さな街ですが、
街並みがめちゃくちゃかわいくて、
1年中お花を飾ってあるのが特徴的です。
川沿いにはレストランやホテル、
お惣菜屋さんやチーズ、パン屋さんなどが並んでいます。
美しい街並みで「プチヴェニス」とも呼ばれています。
もしコルマールに2泊以上するのであれば
アパルトマン(家具付きアパート)を借りるのもお勧めです。
市場で食材を買って食事を作ったり、楽しいですよ。
ブッキングドットコムでも予約できちゃうんです。
わたしも今回アパルトマンを借りました。
部屋からの朝焼けも素敵でしたね。
2杯目「アルザス・グランクリュ」
ここで、もう一杯飲んでいただきましょう。
さきほどのクレマン・ダルザスと同じシップ・マックの
「アルザス・グランクリュ・リースリング」です。
シップ・マックはコルマールからほど近い、
ユナヴィールという村にあります。
今回はなんとも珍しいマグナムボトル、
通常の2倍の大きさの瓶で用意しました!
アルザスワインのボトルは縦に細長い形をしているんですが、
マグナムだと一層長くなるので、
みなさん初めて見るとびっくりされます。
シャンパーニュでは、
マグナムのほうが熟成や状態が良く、おいしいと言われるんですが、
リースリングでもこちらのほうが味がいいと、
生産者のジャックからもお墨付きをもらいました。
蜂蜜のような甘い香りや、リンゴの蜜っぽい香り、
花梨の香り、火打石のようなミネラルの香りも感じられますか?
飲んでみると、最初に果実味が来ますが、
その後飲み込むときに「輪郭」を感じられるでしょうか。
コントレックスというお水を飲んだことのある方はわかると思うんですが、
豊富なミネラルが味わいの輪郭を形作っているんです。
そして、最後には酸味とやさしい旨味がじわーと美しい余韻を作ります。
さっぱりと飲み疲れないので次の一口がすすみます。
シップ・マックではどんな人がワインを造っているか
きょうは、シップ・マックという造り手のワインを
2種類飲んでいただきました。
私がクレマン・ダルザスとリースリングが好きだったので、
3年ぐらいアルザスに通いつめて色々な生産者に会った結果、
輸入を決めた造り手です。
下の写真の男性がさきほども少し話に出したジャック、
代々アルザスでワインを造ってきました。
もうほんとに呑んべいで(笑)。
隣は奥さんでローラ。彼女はアメリカ人です。
醸造学で有名なカリフォルニア大学デイビス校に進学しました。
ジャックとローラは、オレゴンのワイナリーで研修中に出会って、
大恋愛して、ローラはアルザスまでついてきたんです。
彼女はとっても賢い方で、
ジャックと出会うまではフランス語も喋れなかったのに
今や村会議員までしているんですよ。
ローラが事務系の仕事を担っているので、
対応がとても早くて助かるんです。
フランス人は結構のんびりで、
ヴァカンスもたっぷりとるし、
それ以外にもすぐ旅行に行ったりするので、
連絡が全く取れなくなって苦労することもあるんですけど、
シップ・マックはアメリカ的でレスポンスが早いんです(笑)。
シップ・マックの畑について
下の写真が、みなさんに飲んでいただいた
ワインの造られる畑のある地域です。
かなりいい立地だと、ジャックも自慢のようです。
アルザスのロマネコンティと言われるワインを生み出す、
トリンバックという造り手のクロサンチューヌの畑も隣接しているんですよ。
ブドウの写真は、
上から、リースリング、ミュスカ(・ダルザス)、
ピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネールという品種です。
ピノグリは藤色をしていますね。
少し色が濃いワインができます。
ゲヴュルツトラミネールも、
白ブドウとは思えないぐらい色がついているのがお分かりになるでしょうか。
でも、だいたい巨峰くらいの紫色じゃないと黒ブドウと呼ばれません。
これくらいの色だと、まだ白ブドウなんです。
私が訪れた8月初旬の時点で、
ジャックは8月25日くらいから収穫を始めると言っていました。
ジャックは今年で60歳なんですが、
生まれて初めて8月のうちにブドウを収穫することになると。
それほどに今年は異常なほど暑かったようです。
アルザスなら、遅い年は10月の初めぐらいに収穫することもあるんですよ。
こんなに早いのは本当に珍しいです。
リースリングの楽しみ
この「アルザス・グランクリュ・リースリング」
とってもおいしいですね。
この果実の甘みって、リースリングに独特で、
例えばシャルドネにはないですよね。
すごく疲れたときって、ちょっと糖分がほしいものですけど、
そういう時私は一杯目にリースリングを飲みます。
家では本格的なベッコフは作れないんで、
フードスタイリストの飯島奈美さんがアレンジして考案した
「鶏じゃが」を合わせたりしています。
これがリースリングとのマリアージュが最高なんです!
ちなみにレシピは、昨年出版した、飯島さんとの共著
『ワインがおいしいフレンチごはん』という本に載っています。
フランス全土の郷土料理を、日本で手に入る食材で作って、
それに合うワインを私が選んで、
その地方の特色とマリアージュのポイントを解説しました。
アルザスでは、
「タルトフランベ(=フラメンキッシュ)」
という薄焼きピザも、
郷土料理として有名なんですが、
このアレンジレシピも載っていますよ。
地元では代用でパイ生地を使って作ったりもするんですけど、
飯島さんは、なんと餃子の皮で再現しています。
地元では、サワークリームを塗ってベーコンと玉ねぎを乗せただけの
シンプルなものがスタンダードなんですけど、
アルザスの名物チーズ「マンステール」とクミンを乗せたものもおいしいです。
これはゲヴェルツトラミネールと合わせたいですね。
今回、ジャックとローラが食事に招いてくれましたが、
彼らも普段からきちんとした伝統料理を作っているわけでは、もちろんないんです。
シュークルートを塩漬けキャベツで作ってみたり、
ちょっとアレンジして、簡単にワインと合わせて楽しんでるみたいです。
さて、そろそろお時間のようですね。
まだまだぜんぜん飲み足りない、
話したりないですが(笑)。
アルザスという土地、ワイン、食が伝わったでしょうか……。
これを機に、アルザスや他のワイン産地にも興味を持って頂けたら幸いです!
今日は、お越し下さってありがとうございました。
また、お会いしましょう。