11月下旬。
前回と同じように夕暮れ時に、杉山明日香先生によるトークショウ
「サロン・ド・アスカ」が開かれました。
場所も同じ東京・西麻布にあるワインバー/レストラン・ゴブリンです。
→前回までの記事はコチラ(第1回前篇・後篇/第2回/第3回)
「アスカ・レコール・デュ・ヴァン」を主宰し、
ソムリエ講座をするだけでなく、
ワイン輸入業も手がけ、ゴブリンとともに、
パリでレストラン「ENYAA Saké & Champagne」もプロデュースしている
明日香先生は、2週間ごとにフランスと日本を行き来しています。
ヨーロッパ各国の銘醸地を訪れることも多いそうです。
この会は、明日香先生が本場で得た貴重なワイン情報を聞きながら、
ゆかりのワインを楽しむ1時間のささやかな集まりです。
今回も視察してきたばかりのフランスのワイン産地についてのお話でした。
場所は、明日香先生が愛してやまないシャンパーニュ地方!
以下に、会の模様を少しだけお伝えいたします。
サロン・ド・アスカは今回が最終回ですが、
また、来年も開催予定です。
ご興味を持たれた方は、ぜひご参加ください。
「ヴィジット」のすすめ
みなさん、こんにちは杉山明日香です。
今日は、お越しくださいましてありがとうございます。
今回のサロン・ド・アスカでは、
またシャンパーニュ地方に行ってきましたので、
そのお話をさせていただきます。
いつも通り、さまざまなメゾン(ワイナリー)にヴィジットしてきました。
業界用語で、「ヴィジット」とは、メゾンを訪ねて、
解説を聞きながら、そこのワインをテイスティングさせてもらうことを言います。
造り方や、歴史を聞いた上で、シャンパーニュ地方では、観光客など一般の方の受け入れを
しているところも結構あって、造り方や、歴史を聞いた上で1〜5杯ぐらい飲ませてもらえて、
20〜50ユーロといったところです。
たとえば「ポメリー」や「ヴーヴ・クリコ」という
メゾンを聞いたことがあるでしょうか?
シャンパーニュ地方の大手グランメゾン(大手のワイナリー)ですね。
こういうところは、観光客も多いので、日本語によるツアーすらあります。
気軽に参加できますね。
ただ、わたしの「ヴィジット」は、輸入などの商談やインタヴューだったりするので、
ちょっと意味合いが違います。
お話を聞いてワインを飲むのは一緒なんですが。
一般にはお客さんを受け入れていない小さなメゾンにも訪ねて行きます。
ヴィジット1. ドメーヌ・ルネ・ジョフロワ
今回はまず、ドメーヌ・ルネ・ジョフロワを訪ねました。
キュミエールという村にあります。
最近では、パリの3つ星レストランでもオンリストされている、
優れたシャンパーニュの造り手です。
お話の前に、そのジョフロワのシャンパーニュで乾杯しましょう。
かんぱーい。
「エクスプレッション」というキュベ(銘柄)で、
自分たちのテロワール(畑の特性)を「表現」する、
という意味が込められています。
下がジョフロワの畑の写真です。
今から一週間前の風景ですが、
葉っぱがいっぱいあるのはシャルドネの畑です。
ピノ・ノワールとピニ・ムニエは葉が落ちやすいので、
もう散ってしまっていました。
いまみなさんと一緒に飲んでいるこのワインは、
シャルドネが10 %、ピノ・ノワールが50%、ピノ・ムニエが40%の割合で
ブレンドされているんですが、
だいたいジョフロワさんが持っている畑の割合と対応させているとおっしゃっています。
(実際、シャルドネ24%、ピノ・ノワール42%、ピノ・ムニエ34%)
1600年代から畑を持っているとのことですが、
現当主ジャン・バティストさんの代で、オーガニックに変えたそうです。
なんと娘さんが5人もいらっしゃるようで、小さい頃から香りを嗅がせて、
シャンパーニュ好きにさせようとしているって言ってました(笑)。
やっぱり今年は、シャンパーニュ地方を含め
フランス全土でブドウにとって、
とてもよい気候だったそうです。
2000年代で一番の年(ヴィンテージ)になりそうだ、
とジョフロワさん含め、生産者の皆さんが言っていました。
ヴィジット2. ド・スーザ・エ・フィス
ジョフロワの次に、第2回のサロン・ド・アスカでもご紹介した、
ド・スーザ・エ・フィスを訪ねました。
ここの蔵は、モーツァルトがずっと流れているんです。
ワインは熟成するときに音楽を聴いたほうがよりおいしくなる、
というのが、現当主エリックさんの考え方なんです。
水晶も置いてありました。
気が良くなる、らしいですけど……。
なぜかシャンパーニュだけじゃなくて、
チーズも置いてあったんです。
聞いたら、エリックさんが自分でジュラまで行って、
好きな造り手のコンテチーズを買ってきて、
熟成させようとしてるらしいです。
シャンパーニュのカーヴ(貯蔵庫)なら、チーズのカーヴより、
状態がいいに決まってる! って話していました。(笑)
あと1年で食べごろの36ヶ月熟成になるそうで、
私も分けてもらえるようにお願いしてきました。
チーズを愛でながら話すエリックさんがかわいらしいですよね。
今回は、当主自らに案内してもらえたのでそんな話も聞けたんです。
お嬢さんたちなら、だいたい30分話して、30分テイスティングで終わるのですが、
お父さんは、3時間かかりました(笑)。
ちょうど、お嬢さんたちが日本でイベントに参加してて不在だったんです。
テイスティングは、ほんとうにいろいろ試したんですが、
例えばこれは「UMAMI」というキュベです。
彼は「旨味」にこだわりがあるんです。
名前に負けない凝縮感でした。
エチケットのデザインは、ポルトガルの方で、
漢字を使っていて、面白いですよね。
実は、ド・スーザ家も、現当主のひいおじいさんが
ポルトガルから、フランスに移住してきたとのことでした。
結局、テイスティングだけで1時間半かかったんですよ。
かなりいい気持ちになって、お父さんと大の仲良しになりました。
シャンパーニュ地方の赤ワイン
さて、今日の2杯目です。
いま、お配りしていますが……そう、赤ワインです。
なんで、シャンパーニュで赤? と思った方もいらっしゃると思います。
こちらは「コトー・シャンプノワ」という銘柄のワインです。
シャンパーニュ地方は、あまり知られていないんですが、
赤ワインの生産もしているんです。
こちらのワインは、今回のシャンパーニュ視察でもヴィジットした、
ラルマンディエ・ベルニエのものです。
(その模様は、日経リュクスでの連載
「杉山明日香のシャンパーニュ紀行」で2019年1月に公開予定)
2012年のワインです。
シャンパーニュ地方の黒ブドウの生産量は少ないので、
出来がよい年にしか、コトー・シャンプノワは造られないそうです。
ラルマンディエでは、生産量も少ないので、
基本的にはあまり売らずに、自分たちで楽しむために造っていると、
おっしゃっていました。
果実味豊かで、酸味がキレイで、あまり渋くなくて、
疲れているときなんかにぴったりですよね。
この軽やかさは、和食に合います。
わたしのパリのお店ENYAAにも置いてあるんですよ。
シャンパーニュのおすすめビストロ
シャンパーニュで、
とてもいいビストロを見つけたので、
ご紹介させてください。
Sacré Bistroという名前で、
シャンパーニュの生産の中心都市・エペルネにあります。
この地方で一番大きな都市はランスなのですが、
そこで、とても人気になったハンバーガー屋さんが、
今年オープンさせたビストロです。
まず、ワインリストがすごい。
さきほどお話したジョフロワ、ド・スーザ、ラルマンディエ、
みんなありました。
スティルワインのリストもすばらしい。
ここまでシャンパーニュが揃っているビストロは、
フランスでもそうないと思います。
食事は、ビストロらしいシンプルなものですが、おいしい。
写真は、ブータン・ブランとノワールを、
洋梨のコンポートと合わせた一皿。
次がシャンパーニュ地方でよく見るシャロレー牛のステーキです。
もちろん、ハンバーガーはこちらのお店でも食べられます。
バンズが自家製で、
いろんな種類のチーズを選ぶことができるスタイルでした。
気に入っちゃって、10日間の滞在で、2度も行ってしまいました。
パリでシャンパーニュを楽しめるお店
シャンパーニュからパリに戻ってくると、
ちょうどボージョレ・ヌーヴォーの解禁日でした。
フランス人には、日本の騒ぎ方はクレイジーだと言われていたので、
実際、現地はどうなのかなと思ったら、
結局、盛りがっていました(笑)。
1つめの写真は、樽から直接飲ませてくれる店です。
DJがいて、店の外までお祭り騒ぎ。
その次の写真のお店は、年齢層が高めでした。
シャンソンが流れていて、
有名どころの曲になるとみんなで大合唱で盛り上がっていました。
フランスではボージョ、と略すみたいですが、
ボージョレ・ヌーヴォーをいろんなところで味わったところで、
最後はやっぱりシャンパーニュが飲みたくなって、
いつもいくビストロに行っちゃいました。(笑)
もちろん、ここでもヌーヴォーを楽しみましたよ!
この店は、なんと200種類以上のシャンパーニュが置いてあるんです。
跡取り息子のジミーくんはよく勉強していて、詳しいんです。
いつもブラインド・テイスティングを競ったりします。
といったところで、そろそろお時間のようです。
今日は、出口のところに、「酒石」を置いておきました。
ワインの勉強をするとよく聞くと思いますが、
実物を見たことのある人は少ないのでは?
ジョフロワでいただいたので見てみてください。
シャルドネの酒石はベージュ、ピノ・ノワールのは赤みがかっています。
それでは、本日もお集まりいただき、ありがとうございました。
また、こんなワインとお話の会を開きたいと思っていますので、
そのときは、ぜひお越しください。
よろしくお願いします。